がん特集ページ
肝がんとは
肝臓にできる肝がんは、大きく2つに分けられ、肝臓自体から発生する原発性肝がんと、胃がんや大腸がんなど他の臓器のがんから、がん細胞が肝臓に飛んできて育つ転移性肝がんがあります。そして原発性肝がんも肝細胞から発生する肝細胞がんと、肝臓の中の胆汁の通り道である胆管の上皮細胞から発生する胆管細胞がん、その他の部分から発生するがんに分けられます。原発性肝がんのうち95%は肝細胞がんであり、胆管細胞がんは5%以下と比較的まれな腫瘍です。
肝がんによる死亡者数は1970年代後半より急速に増加しました。2000年を過ぎやや減少してきましたが、今でも年間約3万人が肝がんで死亡しています。2013年の部位別がん死亡率では男性で4位、女性で6位と、多くの方が肝がんで死亡しています。
肝細胞がんの原因
原発性肝がんの大多数をしめる肝細胞がんのうち、C型肝炎やB型肝炎を基礎疾患とすることが多く、特に肝硬変に進行した肝臓から発生しやすいと言われています。その他アルコールや脂肪肝が原因となります。1991年ではC型肝炎から発生する肝細胞がんが70%でしたが、その後C型肝炎から発生する割合は60%まで減少し、代わりに脂肪肝から発生する肝細胞がんが増加する傾向にあります。
症状
肝臓は予備能力が大きく、通常は肝がんが発生してもよほど進んだ状態でないと自覚症状はないことがほとんどです。中には上腹部のしこり、痛み、発熱、黄疸などがみられる場合があります。
診断
肝細胞がんの診断は、血液検査と画像診断にて行います。血液検査では通常の肝機能検査に加えてAFP、PIVKAといった腫瘍マーカーが有用です。画像診断では腹部超音波検査のほかにCTやMRIが有用です。多くはこれらの検査を組み合わせて肝細胞がんの確定診断は可能ですが、それでも診断がつかない場合は腫瘍の一部を直接とって調べる生検という方法が必要になる場合があります。
病期
肝細胞がんの進行程度(ステージ)は肝細胞がんの進展状態をあらわすT因子、リンパ節転移の状況をあらわすN因子、遠隔転移の状況をあらわすM因子の組み合わせによって、ⅠからⅣまでの4段階にわけられています。 肝細胞がんが①1個だけである、②大きさが2cm以下である、③腫瘍が血管の中に入り込んでいない、の3つのうちあてはまる個数によってステージが決まります。
ステージⅠ ①②③すべてあてはまる
ステージⅡ ①②③のうち2つがあてはまる
ステージⅢ ①②③のうち1つがあてはまる
ステージⅣ ①②③すべてあてはまらない
また、①②③いずれかにあてはまっても、リンパ節転移や遠隔転移があるものはすべてステージⅣとなります。
治療
治療方法は、腫瘍のひろがりや肝予備能(肝臓の機能がどれだけ保たれているか)によって選択します。また患者さんの年齢や全身状態も考慮する必要があります。
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1肝切除術
外科的に腫瘍を含めた肝臓の一部を切除する治療です。そのため、比較的肝予備能のよい患者さんが対象になります。
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2経皮的治療
ラジオ波焼灼療法(RFA)、マイクロ波凝固療法(MCT)、エタノール注入療法(PEI)などがあります。近年ではRFAが多く用いられています。RFAは超音波を用いて体表から腫瘍に針を刺し、腫瘍とその周囲を焼灼壊死させる治療です。肝予備能がある程度低くても行うことが可能です。
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3肝動脈(化学)塞栓療法(TAE、TACE)
腫瘍を栄養する血管にカテーテルを使って人工的に塞栓物質でつめてしまうことによりがん細胞を壊死させます。肝予備能が悪い、または腫瘍が多発しているなどで肝切除術やRFAが行えない患者さんが対象になります。
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4化学療法
カテーテルを使って肝動脈に抗がん剤を注入する肝動注化学療法と、内服薬や点滴による全身化学療法があります。
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5肝移植
肝がんが「3cm、3個まで」、または「5cm、1個まで」の場合に保険適応があります。